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普通ビックリさせるだけならわざわざあんな場所で寝てるわけがない。
……保証はないがそれなら多分紫もこっちの世界に来ている…と思う。あの青い光が原因で飛ばされたのだとしたら、側にいた紫もきっと来ているはずなのだ。
だとしたら今紫はどこにいるんだ?まさか今の俺と同じで一人で居るんじゃ?お兄ちゃん、お兄ちゃんって一人泣いているんじゃ?!
そう思うと胸が締め付けられるように痛くなる。
……早く見つけてやらないと! そして一緒に帰るんだ!元の世界へ!!
焦る気持ちが自然と俺の足をはや歩きにさせる。その時だった。
ズゥン……ズゥン……
「っ!?」
前方から地響きのような足音が聴こえてくる。俺は咄嗟に獣道の脇にある草むらに身を屈めた。
ズゥン!……ズゥンッ!!……
足音がどんどん大きくなってくる。そして……その足音の主が俺の目の前を通りすぎていった。
「………………」
足音が完全に聴こえなくなるまで身を屈めて息を潜める。
……行ったか。
顔を出して辺りを伺うが、足音の主の姿はもう見えない。ホッと息を吐く。それにしても……
「何だったんだアレは?」
体長が明らかに2mはありそうな黒い塊……としか形容出来ないヤツが俺の目の前を通りすぎていったのだ。
アレは熊……だったのか?でも二足歩行していたから熊じゃないよな?
……まさかビッグフット?んな、アホな。
取り敢えず一つ分かったことがある。この森にはバット一本なんかじゃどうにもなら無いヤツがうろついている…ということが。
「……最悪だな、おい。 まだ昼間だから良かったけど、夜じゃどうなってたんだこれ?」
木々の隙間から木漏れ日が射し込む森の中で俺は天を仰いで呟いた。……空見えないけどな。
再び獣道に戻って歩き始めてからもう1時間くらいは経っただろうか?
森の外に出られる様子は今のところ全く無い。
「ハァ……ハァ……まぁ、そりゃそうだよな。」
息を切らしながら俺は虚空に向かって呟く。そりゃただ獣道を進んでるだけなんだ。この道が森の外に繋がってる保証はどこにもないのだ。
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