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「でも何か変化が欲しいな……景色が全く変わらないのはちょっと辛い……ん?」
独り言を言いながらも歩みを進めていると、突然ガサガサと音が聴こえたのと同時に俺の目の前にウサギが飛び出してきた。……額に角が生えている点を除けばだが。
「キュッ?」
角ウサギ(仮称)は俺に気付くと首を傾げて可愛らしい鳴き声を発した。しかしすぐに俺が余所者と分かるや否や……
「ギッ! ギギッ!!」
角を振りかざして威嚇をしてきた。
……どうしたもんか。大きな声を出したらビックリして逃げるかな?
安直にそんなことを思い立った俺は、バットを振りかざすと「わっ!!」と大きな声を出した。次の瞬間……
「ギッ!? ギギャーッ!!」
角ウサギは驚いた声を上げたのと同時に、額を俺に向けるといきなり地面を蹴って俺に突っ込んできた。
「っ!? うおっ、あぶねぇっ!?」
角ウサギの突進はかなりの速さだったが、俺は紙一重でその突進をかわす。
……あ、あぶねぇ。今のに当たってたら肉を抉られてたんじゃねぇか!?こ、こいつ……見た目よりずっとヤバイ!!
角ウサギは地面に着地すると再び俺にロックオンしようとしていた。だが、もうやらせる気はなかった。バットを振り上げ、そして……
「ハッ!?」
ふと我に返ると、俺は血まみれのバットを持って息を切らしていた。見下ろすと、そこには角ウサギ……だった肉塊が一つ。顔はグチャグチャでもうなんだったのか分からない程だった。
……殺られる前に殺れって思ったらやり過ぎたな。とはいえ本気で命の危険を感じたんだからしょうがないよな。うん。コイツが悪いんだ、コイツが。
自分にそう言い聞かせながら死体を見下ろしていると、角ウサギの死体は突然砕け散り、空中に霧散していった。
「……死体は残らないのか。」
この世界が俺のいた世界とは決定的に違うということを再認識した瞬間であった。まぁ、2mはありそうな熊みたいのが二足歩行していた時点で違うとは思っていたんだけどな。
そう思ったその時、俺はさっきまでとは違うあることに気付いた。
……背後から何やら息をする音が聴こえている。しかも結構上から。
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