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嫌な予感しかしなかったが、一応お約束の振り返りをして確かめると、そこにはさっき見たビッグフットが……ていうかアリクイだった。2mはあるアリクイだった。
「うおおおおおぉぉっ!!?」
流石に角ウサギの時のように殺られる前に殺れは無理だと判断した俺は全速力で逃走した。
獣道から完全に外れたが、そんなこと気になんてしてられなかった。後ろも振り向かずの全力疾走でひたすら逃げた。
で、その全力疾走中に俺は運よく森からの脱出も果たしたのだった。
勢い余ってスッ転ぶが、すぐに体勢を立て直して森を見る。
……追っては来てない? 振り切ったか?
しばらく動かずに森を見るが、熊アリクイ(仮称)が追って森を出てくる事はなかった。それが分かるといつの間にか止めていた息をおもいっきり吐き出した。
「……ハァー、びびったぁ! まさか後ろに立ってるとかホラー映画じゃないんだから……まぁ、でも森は一応抜けられたし結果的には良かっ……た?」
俺は森から視線を外して背後の光景を目に映すと、思わず語尾が疑問系になった。その理由は……目の前に広がっていたのは地平線の彼方まで広がる平原、それだけだったからである。
遠くに今まで俺がいたような森……というか、林のような場所が点々とあるが、本当にそれだけ。
町も街も村も、それどころか人の姿すら見当たらない。分かりやすく言えば……緑の砂漠とでも言おうか。それ以外形容しようのない光景だった。
「……冗談だろ、おい。」
脚から力が抜けて膝立ちになりながら呟くが、誰も冗談だとは言ってくれなかった。
絶望が目の前を覆い尽くす。水もなければ食料もない。なのにこの平原には町も人も見当たらない。
ハッキリ言って詰みだった。
「…………どうすりゃいいんだ? 森で食料集めたりしないと駄目か? でも森に入ったらまた角ウサギとか熊アリクイと遭っちまう可能性があるし……そもそもまた入ったらもう一度脱出出来るのか?」
残された選択肢の中から何とか生き延びるための鍵を見つけようと必死に思案をしていたその時、遠くからガラガラと何かが走ってくる音が聴こえてきた。
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