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その音の方向に目を向けると、遠くから馬車が向かって来ているのがハッキリ見てとれた。
「お、おぉーいっ!! 助けてくれーっ!!」
俺はバットも使って大きく手を振りながら叫ぶ。すると馬車は俺に気付いたらしく、近くまでくるとその足を止めてくれた。
そして馬車を運転していた御者の人が不思議そうな顔をして言った。
「アンタこんなところで何してるんだい? 薬草でも取りに来たのか?」
「いや、実は……」
俺は取り敢えずさっきまで起きたことを事細かに説明して、何とか乗せてもらえないかと頼むと御者の人は驚くほどあっさりOKしてくれたのだった。
――――「ふぅ……危うくあの森で野宿することになるかと思った……」
馬車に乗せてもらってようやく安心出来たところで、俺はため息混じりにそう呟いた。すると、御者がまた不思議そうな顔で俺に質問をしてきた。
「アンタが大変な目に遭ったのは分かったが……結局何しにあんなところにいたんだい? 馬に逃げられでもしたのか?」
「いや……まぁ、なんというか……何で俺があんなところにいたのか俺も知りたいというか……」
「?? 言ってる意味が分からんのだが?」
「えっと……実は……」
隠しててもしょうがないと思った俺は、御者に自分は別の世界から来た人間であり、この世界のことがさっぱり分かっていないということを告白した。
あと、あの森の中で目が覚めたことも。だからあの森にいたのだと。
荒唐無稽過ぎて信じてもらえる気がしていなかったが、どういうわけか御者は俺の話を真剣に聞いてくれて、最終的には「成る程……」と納得しているようだった。
「……信じてくれるのか?」
「まぁ馬も無しにあんなところにいたり、見たこと無い服装だったり、あとそれは……棍棒かい?それも見たこと無いと無いない尽くしだからね。」
「……さっきから馬、馬言ってるけどあそこってそんなに遠いのか?」
「遠いよ? 人の脚であそこまで行ったら多分近くの村からでも3~4日は掛かるんじゃないかな?」
……もしこの人に逢えてなかったらと思うと冷や汗が止まらなくなってくる。マジで命の恩人だよこの人!
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