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「んー、お兄ちゃん今日は何食べたい?」
「そうだなぁ……じゃハンバーグで。」
「ハンバーグは一昨日食べたでしょ!別のにして!」
「えー、何食べたいって聞いたら答えたのに……じゃあ野菜炒めとか?」
「んー…ま、それならいいかな。じゃあ野菜たくさん買わないとね♪」
「はいはい、袋持ちはおまかせあれ姫。」
「ふふっ、じゃあ行こっお兄ちゃん♪」
紫が俺の手を引いて歩き出すのと同時に俺は紫の後ろ姿を見て思った。
――紫が楽しそうにしているのを見ると、俺も幸せな気持ちになる。……守らないとな。この笑顔を。
そうして俺は紫が満足するまで買い物に付き合ったのであった。
――――買い物を終えた俺達が家に向かって歩いていると、その横を一台のトラックが通り抜けていった。
「トラックか……そういやそろそろアレが来る頃だな。」
「あぁ……アレね。そっか~、もうそんなに経っちゃったんだねぇ。」
「早いもんだよな……半年って。」
他の人が聞いたら「何のこと?」と訊かれそうな会話をしながら俺と紫は家へと向かう。
そして家まで直線となったところで俺と紫は思わず足を止めてしまった。何故ならさっき脇を通り抜けて行ったトラックが家の前に停まっていたからである。
「……ねぇ、お兄ちゃん?アムゾンか何かで注文とかした?」
「いや、した覚えはないが……紫は?」
「私もない……ってことはやっぱり……」
「……あぁ、だな。」
嫌な予感が的中してしまったせいでげんなりした顔になりながら頷くと、俺と紫はそのトラックへと近づいていった。
「あ、お帰りなさい!いつものですんで、サインお願いします!」
もはや顔見知りとなったドライバーが笑顔で伝票を差し出してきたので、一言「どうも。」と言ってからサインをしてドライバーに返す。
「んじゃ、積み降ろしはいつもの場所でいいですかね?」
「はい、お願いします。」
俺は紫に買い物袋を渡してから、ドライバーと一緒に荷物の積み降ろしの手伝いを始めた。
――この荷物は一体何なのか。まぁ、簡潔に言うと世界を旅する両親からの土産……もとい、宝の山と言ったところだろうか。
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