第1章――平穏な日常――

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――――荷物を父さんの部屋に運ぶ作業を終わらせた俺と紫は、それぞれの部屋の前で別れると、就寝の挨拶をしてから寝床についた。 いつも通りだった。 ――ここまでは。 まず異変に気づいたのは父さんの部屋の隣で寝ていた俺だった。 ゴン……ゴン……ゴン…… 「…………ん?」 ゴン……ゴゴン……ゴン…… 「……なんだ? 何の音だ?」 奇妙な音に耳を澄ませる。その音はどうやら父さんの部屋から聴こえてきているようだった。 「……まさか、泥棒!?」 嫌な予感が頭をよぎる。いざというときの為に常備しておいた金属バットを手に取る。 そしてゆっくり部屋のドアを開けると、隣の部屋で寝ていたはずの紫が部屋から少しだけ顔を出しながら、心配そうな顔で訊いてきた。 「お兄ちゃん……さっきから聞こえる音は何? もしかして……」 「……それをこれから確かめに行く。 紫はどうする?」 俺がそう訊くと、紫は小走りで俺の側に来ると袖を掴んできた。……可愛い。 「……分かった。 俺より前には出るなよ?」 紫が頷くのと同時に俺は少しずつ父さんの部屋へと寄っていく。 ゴン……ゴン………ゴン…… 未だに謎の音は続いている。俺は紫に目を配らせてから、唾を飲み込み、そして……ドアを思い切り開いた。 「おいっ!! 誰だっ!!」 バァンッ!!という大きな音ともにドアが開かれると、それと同時に謎の音が止んだ。 急いで電気をつけるが、部屋の中には5年分の選別した荷物が置かれているだけで、人影は全く見当たらない。 「……まぁ、誰だ!!って言って、俺だ!!って出てくるわけないわな。」 俺は部屋全体を見渡してから紫に向き直ると言った。 「紫、お前は部屋には入らないで部屋全体を見ててくれ。 何か異変があったらすぐ知らせるんだ。」 「う、うん。 気を付けてね、お兄ちゃん。」 不安そうな顔をしながらも頷いた紫を残し、俺は一人部屋の中へと足を踏み入れる。 ……取り敢えずあそこから調べるか。
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