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俺がまず調べた場所は父さんの部屋の中では唯一外部から侵入できる場所である窓。
カーテンがかかっているので割られているのかどうかも分からないが、取り敢えず俺は手にしていたバットでカーテンを捲って確かめる。
「……異常無し。」
窓は割られた形跡もなく、鍵もしっかりかかっていた。どうやら泥棒が入ってきたわけじゃないようだ。だがそうなると……
「外部からの侵入じゃない? じゃああの音は一体……」
ホッとしたのもつかの間、新たな疑問が頭に浮かび上がる。その時だった。
「お、お兄ちゃん!! あの壺っ!!」
「っ!?」
俺は紫の言う壺とやらがどれかすぐに分かった。一瞬光っているように見えたあの壺……それが今は青い光を点滅させながらガタガタと揺れていたのである。
「っ……!! 何かヤバイな! 紫!!早く逃げろ!!」
「えっ!? お、お兄ちゃんは!?」
「この壺を叩き割る! 早く行くんだ紫!!」
「……や、やだ! お兄ちゃんを置いてなんていけない!」
「紫!!」
「やだっ!!」
俺と紫が言い争っている間に壺はどんどん点滅を速めていき、ガタガタと揺れる音も小刻みに聴こえるほど速くなっていた。
そして部屋の灯りも明滅を始め、いつ何が起きてもおかしくない状況になりつつあった。
「紫!! 俺が何とかするからお前だけでも!!」
「やだっ!! 逃げるならお兄ちゃんも一緒じゃなきゃやだっ!!!」
「ゆ、ゆかっ……」
袖にしがみついて離れようとしない妹の名前を再び呼ぼうとしたその時、俺達は…………壺から放たれた青い光に呑み込まれてしまった。
「うっ、うわあああああぁぁぁっ!!?!?」
「きゃああああぁぁぁっ!?!?」
俺と紫の悲鳴が響き渡ったのも束の間、すぐ側にあった温もりが離れていってしまったことに気付いた時には俺の意識は深い闇に飲み込まれていき――――そして、気を失ってしまった。
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