第1章

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暑い、蒸し暑い。 「......したがって、この文を英訳すると..」 静まり返る教室に眼鏡をかけた教師の声が響く、生徒は黙々とノートをとり不真面目な生徒は机に突っ伏し夢の中、ただ放心しているものもいる。 僕はそのどちらでもなく、英文の書かれた黒板から窓の外に視線を移した。 今朝まで晴天だった空は、昼過ぎから灰色の雲に覆われ、僅かに開いていた窓の隙間から入り込んだ風は仄かに雨の匂いがした。 雨が降る気がした。 梅雨が過ぎれば夏が来る。 そして道端にあの太陽のように燃える向日葵が咲き、僕は今年も君を想い出すんだ。 あの日を境に姿を消した、向日葵のように屈託なく笑う僕の幼馴染みを。 僕は黒板に視線を戻し、ノートに英文を書き留めるためシャーペンを滑らせた。
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