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誠side-
僕はおばさんから袋を受け取り、ついでにどら焼を二つもらって黒に別れを告げた。
ここから歩いて12分の場所に僕のマンションのがある。
肉も買わないといけない、この路地をまっすぐ行ったところにスーパーがあるからそこまで行くことにした。
野菜はここで買うと決めているんだよ、黒にも会える。
「………」
袋から視線を外して前を向いたとき、傘をさしているが見覚えのある茶髪が目にはいった。
そして眼鏡越しに目を凝らしてみつめた。
白いはだ、驚いているのか見開かれた瞳、薄い唇…
記憶の中の彼よりも身長は伸びたようだけども
体つきはあまり変わらず華奢だ。
驚いた顔をして僕の方を凝視しているのは
忘れようにも忘れられない僕の大切な大切な…
「け…い……?」
幼馴染だ。
中学の卒業式以来会っていない友人がそこにいた。
この細い路地の先の歩道に。
僕の胸は言い様のない切なさで締め付けられ、手に持っていたビニール袋が落ちた事に気付かない。
啓だ、間違えない、間違えるはずない啓がそこにいる。
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