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「お前の作法は目に余るのです。食房へ参ることは許しません」
綾は都季を冷眼して、その場を立ち去った。
綾の背に控えていた上級女らが、都季の横を過ぎていった。
複数の衣擦れの音が、いつまでも耳に粘りついた。
***
令雲は、医院の下男が毎日薬草畑の世話をしているのを知り、そこに向かった。
刺された腹の傷は笑うと痛むが、静かに歩行するのには差し支えがないほど迄に回復している。
「令雲様。傷に障りませんか。じっとしていなせえ」
畑の真ん中で雑草を引き抜いていた下男が立ち上がった。
「いえ。寝てばかりいるのも退屈です。手伝わせてください」
「わわ、よしてください。患者様に手伝わせたなんて先生に知れたら私が怒られますよ」
なるほど、と令雲は思った。
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