127人が本棚に入れています
本棚に追加
令雲にはさして心惹かれる話でもなかったが、それを思い出したのは夕餉の時刻になってからである。
病舎で一人食事をするのも味気ないでしょうと、白英宗が私室に招いてくれたのだ。
縁側の廊下に近いところに座すと、斜め向こうに娼家が見えた。
「傷は痛みませんか」
白英宗が令雲の正面に座した。
「静かに歩くぶんには何とも……」
「そうですか。動けるなら動くほうがよいでしょう。そのほうが体の回復も早いですから」
「ああ、良かった。寝ているのも退屈なので今日は薬草畑のほうへ少し歩いたのです」
「医院の中ならどこを歩いてもかまいませんよ。しかし、敷地の外へは出ないように」
最初のコメントを投稿しよう!