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白英宗はやわらかく微笑んだ。
その、さしたることもない会話に含まれた笑みが、令雲の背中を冷たくした。
本来ならば、白英宗は辺りを警戒せねばならない。偉進から大枚を受け取り、令雲を匿っているのだ。
令雲の身を案じるのが当たり前で、案じるがあまり令雲の行動に慎重を期し、病舎から出るなと言われるものだと思っていた。
しかし白英宗は、医院の中ならどこを歩いても構わないと令雲に関与しない冷たさを匂わせたのち、外へは出るなと釘をさす。
彼は関与しないのではない。
医院という己の領域にいる限り安全だと、絶対的な自信を持っているのだ。
偉進の頼みを容易く承けたのもそれ故であろう。
何故、それほど自信があるのか。
腕に覚えがあるとは思えない。
剣など握ったこともないであろう柔な掌であることくらいは、令雲にも見分けがつく。
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