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しかし確かに白英宗の目には、周囲に何が起ころうと己の領域は守れるという強い自負の光が宿っている。
馬鹿げた根拠のない自信のみでそう思い込んでいる輩などではないと、己の人生経験の勘が告げる。
もしや白英宗の後ろ楯には、とてつもない権力の持ち主が控えているのでは無かろうか。
「お待たせしました」
下男が夕餉を運んできた。
白英宗にすすめられて箸をとった折、娼家二階の窓からこちらを見つめている誰かの視線に気付いた。
右端から四番目の部屋。
そこに居たのは都季である。
昼間、下男が指差していたのはあの部屋であったかと、令雲はようやく納得した。
「どうしましたか?」
白英宗が怪訝に振り返ると、都季は立ち上がった。
部屋の奥に戻ろうとしたらしい。
しかし、何事かと様子を窺いに縁側まで出た下男が都季に気付いて呼び止めると、都季はふたたび窓から顔を出した。
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