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都季の座敷入りを禁じたのは、恨みばかりの感情からきたものではない。
上級女が連坐した昼餉の席で都季の姿を見た折、あらかじめ蓮吾から都季の無作法さを聞かされていたにもかかわらず、その緊張感の無さに辟易した。
上級女は一流の女でなくてはならぬのだ。
それ故、雪美館では見習いに行儀作法を厳しく指南するが、都季は過去、見世娘試験の酌の実技で作法を存ぜぬにもかかわらず優の判定をいただいている。
おそらくそれが、作法を軽視する要因となったのであろうが、客は酌の作法を存ぜぬとも食事の作法ならば心得ている者が多かれ少なかれ存在する。
それこそ蓮吾が都季を諌めたように、都季の無作法は雪美館の上級女の質を落としかねない。
「私は家長様に作法試験を行う許可をいただくつもりです。あの無作法を覧(ろう)じれば、家長様も都季の座敷入りを禁じた私の心を判じてくださるでしょう」
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