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くたりと気を失った
志緒の中に、
猛った自分をそのまま
突っ込んでしまおうかと迷った。
だが、志緒の心が
判らないうちは
そんなことできなかった。
本気で抵抗してなかったのは
判っている。
だが、だからって
こいつは他の男のものだ。
しかも相手は、
血を分けた俺の弟。
半分だけだが。
俺は確かに獣や
化け物みたいな生き物だが、
ここは人間社会で、
モラルってもんがある。
そのモラルに大人しく
従うつもりはない。
だが、俺には俺の矜持がある。
嫌がる女に情けなく
追い縋ったり、
無理強いしたりとか──
そんな情けねえことは
するもんじゃねえ。
地下鉄まで志緒を
追いかけた自分は
追い縋ったんじゃねーの、
とすっかりお馴染みになった
おそろしく冷たい
自分に問われたが、
帰れときつく言わなかったのは
志緒だから、と結論付けた。
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