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春の風が爽やかに動く中、ひたすら続く細々とした奈良の山道を車で走った。
緑色の木々たちが次から次へと私に挨拶するように顔を出す。
小鳥のさえずりや川の流れる音が何処にいても聞こえてきそうな、自然がそこにある。
ドライブをするのには最高の環境かもしれないが、コンビニどころか店すらない。
所々に眇眇たる道の駅があるくらいだ。
バスすらもあまり通っている気配がない。
ここでどうやって人は生活していくんだろう?
祖母の暮らしていた村はそんな場所だった。
「山桜の木にお友達がいるの」
祖母は名古屋市内にある、小さな古びた一軒家の自室のベッドの上にいた。
一人暮らしの祖母は寝たきり状態で介護ヘルパーさんのお世話になるくらい弱ってしまっている。
仕事が忙しい両親に代わり、孫娘の私が大学の帰りに祖母の実家に寄り、度々様子を見に行ったりしていた。
祖母の宮下吉乃は、ひたむきで優しく、どんな苦労にも黙って耐える強さを持った女性だ。
私はそんな祖母に小さい頃から面倒を見てもらう機会も多く、たくさんの遊びも教えてもらった。
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