第1章

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 「再来週は家内が実家に帰るから時間が空いて好都合だ」  太田に続いたのは平松文也四段、 四十歳、 奥さんと二人暮らしの銀行員である。  「天峰山の山小屋に泊まるんでしょ。 一度泊まってみたかったんですよ」  という声は塚本宏二段、 二十八歳独身、 市役所の職員である。  結局、 二週間後の連休を利用して合計五人の居合仲間で天峰山に登ることになった。 移動手段はリーダー格の佐藤輝夫の大き目のワゴン車である。 待ち合わせ場所は居合の稽古場になっているいつもの体育館前に朝九時集合ということにした。  出発当日、 九時少し前までには全員が揃った。 リーダー格の佐藤輝夫が、 それではみなさん、 出発しましょう、 と元気よく挨拶して、 五人を乗せたワゴン車が出発した。
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