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「まず私が模範を示します。
よく見ておいてくれ」
吉川はそう言って真剣を腰に差して正座した。
目の前には兜に見立てた鉄製のヘルメットが置かれていた。
吉川は、
本物の兜のかわりにこれで十分だと言う。
吉川はしばし黙想の後、
正座の姿勢から念を凝らしながらゆっくり腰をあげ、
右片ひざを立てるのとほぼ同時に刀を抜いて大上段に構え、
その体勢からすさまじいの気合とともに風を巻いて刀をうち下ろした。
すべての所作を終えて、
あらためてヘルメットを見ると一寸(3センチ)ほどのきれいな斬り傷が頭頂部に出来ていた。
文字通り鉄で鉄を斬ったのである。
吉川の刀は刃こぼれひとつなかった。
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