第1章 #2

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 「これはきっと何かある。 人知の及ばぬ何かが」  小野精一郎はそう確信し、 近所の浄妙寺という浄土真宗の寺に、 住職の真木洞心を訪ねた。 真木は七十二歳の経験の深い老僧で霊能的なパワーも持ち合わせており、 小野は精神修養の目的で、 たまに真木のもとを訪れていろいろ話を聞くことがあった。  「和尚、 今日は折りいってご相談があって参りました」  小野はそう言って、 天峰山での連続滑落事故死にまつわる一連の奇怪ないきさつを真木洞心に語った。 話を聞き終えると真木は言った。  「小野さん、 これはなかなか容易ならない事態のようですね。 事故で亡くなった方々の氏名をもう一度教えてください」  真木の要請に応じて小野は三名の氏名を紙に書いて示した。    平松文也  梅田幸太  吉松周平
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