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「……香茶、淹れなおすわ。茶葉の希望はあって?」
照れ隠しのように、ニコラが立ち上がる。ティーポットやカップを慣れた様子でまとめながらヴィタに視線を送ったけれど。彼女が「うふふふふ」なんて笑いながら、にやにやとした表情を浮かべているのが分かると、頬を真っ赤に染めてそっぽを向いた。
「もう、ヴィタなんて、思いっきり熱くて苦いのを淹れてやるんだから」
「うわぁ、ごめん手伝うから機嫌を直して、お願いだよニコラ」
冗談には聞こえないその脅しに、猫舌のヴィタが一瞬で表情を引きつらせ、慌てて椅子から飛び降りる。そのまま机越しに、ニコラからひったくるように食器を載せたトレイを奪った。
「……メイちゃんには、いつ会わせてくれるの?」
「次のきみのお休みくらいには、手続きも全部終わっているはずだよ。ああ、できればぜひ、きみのあの庭に招待してやってほしくて。きっと喜ぶだろうから」
「分かった、考えておくわ」
ヴィタの言葉に、ニコラは予定を思い返しながらうなずく。自慢の庭を褒められれば、悪い気はしない。それに、この街に生まれ育ったのではない少女にとって、あの庭はきっと落ち着く場所になるだろうという確信もあった。
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