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ニコラの返答にいくらかほっとしたらしいヴィタは、廊下へと続く扉を開きながら、振り返って付け加える。
「あとね、〔月蜜果〕のタルトも作ってほしいんだけど」
「それはヴィタが食べたいだけでしょう?」
「うん、でもきみのが一番美味しいから仕方ないよ」
いたずらっぽい笑みを浮かべる、早くもいつも通りに戻ったヴィタの様子にため息をつきながら、ニコラもつられるように笑った。
いつだって、この本当はずっと年の離れた友人は、すべてを自分の調子に巻き込んでゆく。
そこにはきっと悪気はなくて、きっと誰よりも純粋で、だからこそ自分も含めて彼女の隣人たちはみな、そこに巻き込まれることを望んでさえいるのかもしれない。
さあ、早速準備を始めなくては。彼女の迎え入れた新しい友人を、自慢の庭に招くための準備を。
ニコラは、ヴィタに続いてくぐった扉を後ろ手に閉めながら、心がふわりと浮き立つのを感じていた。
きっとなにか素敵なことがある。そんな予感とともに。
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