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そして〔幻想種〕のうち、特に夜に生きるものが他の都市に比べて多く棲んでいるとも言われている。メイがいたのどかな農業都市では、〔幻想種〕に出会った経験など、たった数度しかない。ヒトと関わりながら都市に棲む〔幻想種〕は性質として穏やかなものが多いとはいえ、それがヒトのあいだで普通に生活をしているらしいと聞けば、想像もつかなかった。
実は自分を選んだ後見人も、ユーヴロティアの礎となった〔吸血鬼〕の末裔だと聞いていた。
後見人としての資質を持つくらいだから大丈夫だといくら言い聞かされても、幼いころに聞いたおとぎばなしの恐ろしい逸話を思い出しては、此処に着くまで毎夜震えていたのだ。
しかし実際に会ってみれば、見た目だけにしろ自分と同じくらいの年頃の、つややかな黒髪をもつそれは美しい少女で。メイは心底ほっとしたような、むしろ拍子抜けしたような心持ちにさえなったのだった。
彼女は、この街の〔吸血鬼〕はヒトの血を口にしないのだと教えてくれた。その代わりに、ユーヴロティアだけで栽培されているという特別な果実から醸造したワインを好むのだとも。
月の光を浴びて育つその果実は、甘く煮てタルトにしても絶品なのだという。彼女自身も好物らしく、近いうちにご馳走するという約束までしてくれた。
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