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蒼の月が昇るころに、この街は目覚める。そして、赤の月が沈むと静かに眠りにつく。数百年に渡って繰り返されてきた営みは、今も変わらない。
もしかしたら、とメイはもう一度目を開けて、カーテンの掛かった窓のほうへと視線を投げた。
この街のことを――もしかしたら、好きになれるのかもしれない。
此処へ来ることが決まったときには、生け贄にさえなるような気持ちだったけれど。もしかしたら、うまくやっていけるのかもしれない。
どうか私が強く生きられるように、お守りください、白の月の聖女さま。
祈るように胸元に両手を組む。
カーテンの向こうには、優しく光る円い月が、静かに微笑んでいた。
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