夜に棲む小鳥

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     ヴィタは、この街に棲む〔吸血鬼〕の中でおそらくもっとも名前が知られている。  ユーヴロティアの礎となった〔吸血鬼〕の末裔。  そして、ユーヴロティアが誇る〔機鉱人形〕の第一人者。  有名な所以はこのあたりの肩書きだろうが、そもそも外見が、はっとするような美少女だ。  年のころは、十七、八歳ほどに見える。長く伸ばした黒髪はつややかな絹糸のよう、すっと通った鼻筋に、ふっくらとした花弁のようなくちびる。猫のような印象の目許は凛とした意志の強さを輝きとして湛えている。左右で違う目の色さえ彼女の魅力を増すようで、奇異にうつらないのが不思議だ。  ただし本人は高級住宅街の奥にある邸宅の敷地から滅多に出ることはなく、数年に一度程度の割合で目撃談が盛り上がる、ちょっとした名物のような存在でもあった。実際に会って話をしたことがなくとも、この街に住むものならば知っていて、なんとなく親近感を抱いているような。
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