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椎名君、親切な人だ。こんなダサ子のあたしを他の人と分け隔てなく接してくれる。あたしは男が苦手だから積極的にしゃべりかけることはないけど・・・。
「久住どうした?気分でも悪いのか?」
だから椎名君がそう言ったじゃん。
先生も男。話しかけないでと思う。話したくなくて小さく頷く。
「保健室行くか?」
「帰っても・・・いいですか?」
「一人で帰れるか?」
「はい・・・。あの・・・3年にいる久住雪音に早退すると伝えてください。」
「久住・・・そうか・・・3年の久住の妹か。」
「はい。」
「そうか、そうか。分かった。伝えておこう。」
あたしはのろのろとスクバに授業道具をドンと放り込み、席を立った。椎名君が申し訳なさそうな表情であたしを見送る。
申し訳ないのはこっちだ。もし仮に送ると言ってくれてもあたしは丁重にお断りを申し上げる。男に送ってもらうなんてまっぴらごめんだ。
しーんと静まり返った廊下を物音を立てず歩いて行った。
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