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その瞬間、単語帳共々あたしは軽薄男に引っ張られた。今までの力とは違う強力な力だった。あたしも単語帳をさっさとあきらめて手を離してりゃぁよかったのに・・・後悔先に立たず。
気が付くと軽薄男の腕の中だった。
「な・・・!」
『何をするんですか!』と抗議の声を上げようと見上げた瞬間、あたしのくちびるにキスが落ちていた。
・・・!!!!!
周囲が凍りつく。
あたしも凍りつく。
あたしは目を見開いたまま間近にある目を閉じた軽薄男の長いまつ毛に見とれた。一瞬の出来事だった。
あたしはあわてて奴の胸をドンと突き飛ばした。奴がよろける。でも、その瞬間、奴は不敵に笑った。
奴が手に持ったままの単語帳を奪い取り、あたしは食堂を駆け出して行った。
不覚。
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