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微妙な空気が漂うのを背後に感じながら、セレスは食い入るようにレヴィアスを見上げた。
「……良いんじゃないですか?レヴィアス。ヒューガが本当に記憶を取り戻したのか、私も確認したいですしね」
以外にも助け船を出してくれたグランシアに、余計な事をとレヴィアスは舌を打つ。
しかし、最終的な許可を出すのはレヴィアスだからこそ、気を抜く事は出来ない。
暫くの間、何かを考え込んでいるようなレヴィアスの沈黙がもどかしい。
だが、やがて彼は思い切るように嘆息した。
「……クロード、お前が先にヒューガと会って確認しろ。話はそれからだ」
「宜しいのですか?」
黙って成り行きを見守っていたクロードは、レヴィアスの命令に瞳を細める。
甘いと、言外に含まれているのが伝わって来るようだった。
「ヒューガが生きてる以上、事ある毎に騒がれても面倒……」
「ありがとうございます!レヴィアスさん!!」
苛立ちに満ちたレヴィアスの声を遮り、セレスはその場で飛び上がる。
「ルイ、ありがとう!貴方のお陰です!」
ギュッとルイに抱き付いて感謝の言葉を繰り返すセレスに、彼は小さく微笑した。
「解ったら静かにしろ。撤回されたくなければな」
頭を抑え、早々に踵を返したレヴィアスの脅しめいた一言に、セレスはピタリと口を噤む。
折角のチャンスを、はしゃぎ倒して無駄にする事は出来ない。
「…………」
固い表情で広間から出て行ったクロードが、どう思っているのかは解らないが。
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