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何も変わろうとしない。
そう言われても仕方がないと思った。
プラチナとルードヴィッヒに解り合って貰いたい。
ヴィンセントとレヴィアスに、許し合って貰いたいと願っている。
「……お前なんて、目覚めさせなきゃ良かったんだ。改めて、機関を恨んでるよ」
「…………」
リディアナだけが抱いている感情ではない。
そう解っているからこそ、何も言えなかった。
心を痛め、傷付く資格など……自分には無い。
波の音に混じる、微かな子守歌が聞こえたような気がした。
まるでセレスを、招いているかのように。
だが、セレスが瞳を伏せた瞬間、リディアナの通信機が反応する。
セレスから少し離れ、通信を受け取ったリディアナの背を、何となく目で追い掛けた。
「何だよ?……は?どこって、海だよ海」
通信機に向かって、八つ当たりしているかのようなリディアナの声は、憤りを隠し切れない。
相手の声までは聞こえなかったが、弾かれたように顔を上げ、見開かれたリディアナの瞳が、チラリとセレスに向けられた。
「それ、レヴィアス達には言ったのか?……ああ、解った。直ぐに戻る」
時間にすれば、ほんの数秒のやり取りだった。
しかし、身体ごとセレスに向き直ったリディアナの表情は、先程までとは異なる強張りを見せる。
「レヴィアス達が、お前を追って来ない筈だよな……戻るぞ」
「……何があったんです?」
何か、とは聞かなかった。
すんなりと口を突いたのは、何かが起こった事を前提とした問い。
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