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「……フッ……」
セレスに凭れ掛かったルイは、口元を震わせて小さな笑みを浮かべる。
それを見たアスーラは、稲妻に打たれたかのような面持ちで凍り付いた。
「笑った……今、鼻先で笑いやがった……チクショー!!」
「……うるさい」
ギャーギャー騒ぐアスーラに、こめかみを押さえたレヴィアスの踵落としが見舞われる。
「んぎゃっ!」と、声にならない呻きと共に、地へ沈んだアスーラ。
アスーラには申し訳ないが、そんな日常の一幕に、セレスは肩を揺らして笑い出す。
「あは……アスーラさん、大丈夫ですか?あはは」
「くっ……セレス、お前もか」
頭部をすっぽり隠したまま、アスーラはくぐもった声で力無く呟いた。
「土葬する手間も省けたし、セレスちゃん、早く中に入りましょ。セレスちゃんの為に、ケーキを作ったのよ」
引き離せないルイごと、セレスを招き入れるように促してくれるジルは、早く自分のケーキを見せたがっているようだ。
その時、何かに気付いたジークリードが、セレスに鼻を寄せて来る。
「主、この匂いは……」
記憶を辿るようなジークリードに、セレスは思わずレヴィアスを見上げた。
紅龍の事を、彼は誰にも告げなかったのかも知れない。
もし紅龍が去っていた時、セレスが何も知らないままでいられるように配慮してくれたと考えるのは、おこがましい事だろうか。
レヴィアスはセレスを見る事無く、館の奥へ消えてしまったが、込み上げる喜びにはしゃいでしまいそうだ。
「紅龍です……紅龍が、生きていてくれたんです」
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