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「賑やかですね……もう少し静かに出来ないのですか?貴方達は」
相当うるさかったのだろう。
広間の扉を開けたグランシアは、不機嫌そのものにアスーラ達を見やる。
彼の後ろには、レヴィアスの姿もあった。
「グランシアさん……」
「ああ、セレス。すみませんね、直ぐに顔を出せなくて」
思わず腰を浮かせて呼び掛ければ、グランシアはニッコリと微笑する。
「……クロード、窓を開けろ。吐き気がする」
「はい」
顔をしかめて指示を出すレヴィアスとの距離は、充満する甘い匂いに対する拒絶を表していたらしい。
そんな中、挟み込むようにイーグルとは反対側の席に座ったルイは、身体ごとセレスの方を向いて来た。
「……ルイ?」
「どっち……?」
「はい?」
「……どっちに、されたの?」
ジーッとセレスを見詰めて来るルイの問いに、セレスは少し前の会話を思い出して赤面した。
が、それが尚更良くなかったらしく、ルイの瞳が悲しげに細められる。
「あ、こっちです……で、でも、いつもの悪戯……」
左のこめかみを指差した途端、ルイはセレスが言い終わるのも待たずに手を伸ばす。
ゴシゴシと、袖口でこめかみを拭うルイの所作が、堪らなく可愛かった。
「うわぁ、酷いな。ばい菌みたいな扱い止めてくれる?」
今にも吹き出しそうなくせに、何がしたいのか良く解らないイーグルの声音。
「そんな事したって消えないよ。ね?セレスちゃん」
「…………」
わざとらしくセレスの肩に腕を回し、セレスを挟んで火花を散らす両者に、目眩がした。
「何をやっているんでしょうねぇ、本当に」
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