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子供じみたやり取りに、事情を知らないグランシアは呆れ返ったように呟いた。
「何呑気に構えてんのよ!イーグルの奴、私達が居ないのを良いことに、セレスちゃんにキスしたのよ!?」
怒りに任せてまくし立てるジルだったが、焦っているからなのか一番重要な「こめかみに」と言う部分が抜けている。
これでは新たな誤解を招いてしまうではないか。
「い、いや、違っ……」
「ブッ!アッハハハハッ!!」
腹を抱えて笑い出すイーグルに、否定の声がかき消される。
「おやおや、いつからそんな仲になったのかは解りませんが、取り敢えずセレス……プラチナさんから伝言を預かっていますよ」
僅かにも驚かず、軽く受け流したグランシア同様、レヴィアスもまた表情一つ変わらない。
「プラチナさんから!?」
慌てふためいて否定するのも虚しいグランシアの冷静さと、彼の口から紡がれたプラチナの名前に、セレスは息を呑んで次の言葉を待つ。
「礼がしたいので、いつでも良いから城に来てくれと。信頼に応えてくれて、感謝しているとの事です」
「そんな……私は情けなく捕まってしまっただけで」
殆どはグランシア達が解決してくれたようなものだ。
謙遜でも何でもなく首を横に振ると、グランシアは優しく瞳を細めて囁いた。
「貴方が引き受けなければ、私達は動いていませんでしたよ」
「…………」
グランシアなりの、慰めだったのだろう。
苦笑い、グランシアを見詰め返したセレスは、その優しさを有り難く受け取る事にした。
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