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審査員は生け花の家元じゃない。
芸術家なんだ。
流派や仕来たりなんて関係なくて、自分自身魂を込めた花を見て、評価したかったんだ。
効き紅茶でお母さんの恩恵を受けたからって、これからも頼る気でいた。
それじゃあ、駄目なんだ。
私の、馬鹿。
自分のふがいなさに悔しさを感じながら、そっと隣を見ると、他の候補生も悔しさに唇を噛んで俯いていた。
……きっとみんな同じ気持ちなんだろうな。
自身の先生が生けた花をヒントにしたんだろう。
それじゃあ通用しなかったんだ。
やっぱり世界の巨匠は伊達じゃない。
美優はグッと顔を上げて、まっすぐにジャラベールを見据えた。
「……ありがとうございました」
そう言って深々と頭を下げた美優に、他の候補生達も慌てて、
「ありがとうございました」
と頭を下げた。
ジャラベールはニッコリと笑って拍手をし、それにつられるように観客達もパチパチと手を叩きはじめ、
『第二審査生け花は該当者なしという驚くべき結果となりました。ですが、この審査と結果は候補生だけではなく皆様の心に何かを残したのではないでしょうか?
クリス・ジャラベール様、本当にありがとうございました』
その言葉に皆は強く頷き、盛大な拍手が会場を包んだ。
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