3636人が本棚に入れています
本棚に追加
/267ページ
―――
―――――
――――――――
「ったく、あの女が活躍するってどういうことだよ」
撫子賞終了後。
八雲は応接室をそっと出て、誰もいない通路でチッと舌打ちした。
「……あの女というのは、綾小路さんのことですか?」
背後で声がして、八雲は少し驚いて振り返った。
そこには沈痛の面持ちの瑞恵の姿があり、
「確か君は候補生の……」
と八雲は確認するように目を凝らした。
「はい、桑原瑞恵です。あなたは綾小路グループの会長と来賓席にいらした方ですよね?
綾小路さんのお知合いなんですか?」
「まさか、あんなのと知り合いじゃないし、優勝されるのは困るんだ」
吐き捨てるようにそう言った八雲に、瑞恵は「まあ」と口に手を当てた。
やっぱり綾小路さんは、綾小路家とは関係のない人間なのね。
同じ名字だからって、身内のように振る舞われることにイライラしているに違いありませんわ。
最初のコメントを投稿しよう!