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僕はその時、彼女が何を思ってそんなことを頼んで来たのか理解できなかった。
少しの間恋人の振りをしたところで互いにメリットはないだろうと。
『私は知ってます。
静流様は綾小路さんがお好きなんですよね?
静流様がなんとしても彼女に撫子賞をと考えていることも、ずっと見ていたので分かってます。
ですがお二人の仲が噂となって、綾小路さんの評判が落ちているのをご存知ですか?
静流様……撫子賞の投票が終わるまで、恋人の振りをしてもらえませんか?
少しの間、私に夢を見せて下さい……』
涙を流しながらそう訴えた彼女に、
『そんなバカなことは出来ない。第一それじゃあ君が傷つくだけじゃないか』
と踵を返すと、彼女は必死で手をつかんで来た。
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