第七話 お前に会えた

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「そうなんだ。」 この五文字、この数秒の言葉で、俺は全ての思いを胸に終い込んだ。 中学最後の夏休み、蝉の声がやたらうるさい中で、 こんな色気のない公園の片隅で、 俺は岸から、あの人の話を聞いた。 そんなの気づいてたって。 そんなの前から知ってたって。 俺はその時に触った鉄棒の温度を、今でも忘れないでいる。 どんな形であれ、お前が俺にしてくれた初めての告白だったんだから。 今日も、放課後がやってまいりました。 朝が来れば、昼が来ます。昼が来れば、夜が来ます。 授業が始めれば、そのうち終わります。 朝礼があれば、終礼あります。 今日も、放課後が俺を迎えに来ました。 はあ。 いつの間にかもう岸の席は空っぽで、 そして俺の心も空っぽです。 俺って最近、ため息多くないか。 ため息って幸せ逃げちゃうんだろ。 深呼吸すると幸せ戻ってくるんだっけ。 辞書には載ってないよな、こんなこと。 なんだよ、このもやもやどうすんだよ。 あのトランペット女子が悪いんじゃないんだよ。 放課後だよ、部活動だよ、こっちは帰宅部だよ、邪魔してごめんな。
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