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とりあえず帰るか、まっすぐお家に帰ろうか。
考えていてもしょうがない、放課後が終わったら夜来るんだって。
こうして時間は無情にも過ぎていくのでありましたとさ。
俺はそんなことを考えながら、やけに重い足を少しだけ叩いて昇降口に向かった。
「遅い、よ。」
幻覚でもなく、空耳でもなく、岸がそこにはいた。
どうやら俺の放課後は、まだまだ前半戦のようであります。
「先に帰ってたかと思ったんだよ。」
お願いだ、空っぽになったの俺の胸を一気に溢れかえさせるような、そんな顔で見ないでくれ。
「あの子帰ってたし、それ澤ちゃんに言わなきゃいけないし、電話じゃなんかあれだし。」
そうだな、そういうとこ律儀なんだよな。そんなお前だから俺…
「それに、さっきのまだ完結じゃないから。」
あれだよな、さっき言ってたやつだよな。
トランペットちゃんに掻き消されたやつだよな、お前わかってないのか。
語尾だけだ、語尾だけなら言えるぞ、多分。
それよりこれ学校の昇降口でするような話じゃないよな。
「ちょ、ちょっと待って。場所変えないか?ここじゃちょっと…」
「え、あ、そうか、そうだよね、ごめん。」
岸の声が震えている。俺、もしかして結構大事なことを聞きそびれている可能性が高いんじゃないのか。
「あの、とりあえず俺の家来る?」
「え?」
「いや、だから、俺の家に来いよ。」
これは決して色っぽいお誘いではありません。
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