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俺は今、目の前で伏し目がちな岸の顔を、どうにか振り向かせたい。
あの夏の日、俺に大切な人の話を話してくれたお前だから。
俺は今、お前の傍にいたいんだよ。
「とりあえず、雨降ってきたら嫌だし、帰るか。」
「う、うん。一緒に帰る。」
なんだろ、やけに素直だな。
あれ、岸の性格って、こんな可愛かったっけ。
「あ、コンビニ寄っていい?炭酸飲みたい。」
「いいよ、コンビニ。俺外で待ってる。」
「一緒に選べよ。奢ってやるよ。オレンジジュースか?」
「そんな甘いの飲まない。炭酸水。」
「なんだよそれ、無味だぞ。」
「いい。無性に炭酸水が飲みたくなったんだよ。」
そう言って少し足早に歩き出した岸の背中が、夕焼けに染まって遠くなる。
いつも見慣れているその背中が、妙に小さく見えたのは気のせいだろうか。
とりあえず、トランペットで聞こえなかったってことは内緒にしておこう。
今のところは、ね。
to be continued...
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