第5走

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花枝を足で踏みながら振り返ると、ユオは呆れ顔でこちらを見ていた。 止めてくれる気はないらしい。 「おもしろそうじゃん。俺もエコの実力見てみたいし」 そしてこんな事を言う始末だ。 どうやら放棄する、という選択肢を認めてくれないらしい。 「俺はやらないわよ!」 「まぁまぁそう言わずに」 「まぁまぁこいつら人質にするかr」 最高の悪手だった。 手近にいたファルスを特に深く考えずに持ちあげたオファニエルは、思わず目を見開く。 「てめぇ殺すぞ」 一瞬でオファニエルからファルスを奪いとった江湖は、地を這うような声を出してオファニエルを睨む。 今頃になって痺れる手に、オファニエルは思わず目を向ける。 「だから言ったっしょ。エコりんはつえーの!!」 「ファルス、大丈夫?」 「エコ兄ちゃん、はやすぎ」 自分の事のように胸を張る花枝を無視して、江湖は自分の腕の中にいるファルスに目を向ける。 ファルスは少し目を回していたが(江湖のせい)無事だった。 江湖はファルスをゆっくり地面に降ろし、オファニエルをキッと睨む。 「俺の天使たちに何かしてみなさい。全力で潰すわよ」 「……どこを?」 ……ユオがまさかそんなツッコミをするとは思わなかったけどスルーするとして。 江湖は顔を青くするユオをチラリと見て、息を吐く。 「この俺が目で追えなかった……だと?」 あ、なんか変なスイッチ連打してしまったらしい。 おもしれぇ、と呟くオファニエルの目はすでに爛々と輝いていた。 今日はファルスとフィリスと遊ぼうと思っていたのに。 「クラ姉、ロー姉」 「まほーおしえてほしいの!」 ……魔法の練習をするらしいので、まぁいいか。 江湖のその複雑そうな顔を見て観念したと思ったのか、花枝が二パッと笑った。 「んじゃ範囲はこの街ね。制限時間は……そーだなー、この時計がテッペン指すまでねー!」 そう言った花枝が拍手をするようにパンッと手をあわせると、江湖とオファニエルの腕に時計が現れる。 今はちょうど9時を指している。 ので、タイムリミットは3時間か。 まったくめんどくさいことになってきた。
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