第5走

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それだけではなく、喉仏の下辺りにピアス、ヘソにもピアス、乳首にもピアスがあいていた。 よくよく見てみれば耳はもちろん、目の下や口にもピアスをしていた。 それは不審者と間違えられても仕方がないと思う。 ついでに言えばズボンのボタンも1、2個外れている。 それは変態と間違えられても(以下略) 「ん?」 「え?」 そんな事を思いながら視線を送りすぎたのか、その男と目が合った。 ……気がする。 いやいやそんなまさか。変態不審者と目が合ってしまったとか。 その男がこちら(屋根)に向かってのぼってきているだとか。 「ちょお、アンタ」 「………………」 逃げてしまえばよかったのだが、その男の容姿の異様さに呆然と目の前に来るのを許してしまった。 ピアスさえなければイケメンの部類に入るだろう。 あと服をちゃんと着れば。 「今の見てたん?」 「……え、えぇ」 「やー、参ったわ。道あるってたら急に女の人に叫ばれてなー」 「……それは仕方ないと思うわ」 「え……アンタ、オカマ?」 「口調が特殊なだけよ」 もう何度も繰り返したやり取りを終え、江湖はため息を吐く。 内心、この男よりは特殊じゃないけど。と思いながらも、それを口に出すことはなかった。 それにしても、この世界にも訛りというものがあるのか。 この男は先程から変わった喋り方をする。 格好も奇抜で喋り方すら奇抜とは、個性もここまでくると清々しい。 「そんなことより、あの女の人は無事なの?」 「あー、眠っとるだけやから安心しぃや」 俺の使い魔の能力な。と、男はカラカラと笑う。 どうやら"デイルイ"というのは使い魔の名前らしい。 「どんな使い魔なの?」 「お、興味あるんか?ゆーても相手を眠らせるしか能力ないんよ」 「あら、それも立派な能力じゃない」
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