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相手を眠らせれば無力化したも同然だ。
なかなかに便利な能力だと思うのだが、この男は複雑そうな表情をする。
「もっと派手な使い魔がよかったな」
「その分あなたが派手じゃない。ガマンしなさいな」
「ぶっは!違いないな!アンタおもろいなぁ」
自分が派手だという自覚はあったのか、男は目に涙を浮かべるほど爆笑している。
正直な感想を言っただけなのだが、ツボにハマってしまったようだ。
「はー、笑わせてもらったわ。俺の名前はネムレス・メラクリア。こっちが俺の使い魔のデイルイな」
そう言ったネムレスの腕に現れたのは、胴がバネのようになっているネコだった。
一見チェシャ猫のようだが、色は黒く、ピンクのモヤを周りに纏わり付かせている。
シッポの少し手前にはゼンマイのようなものが付いていて、ネムレスとはまた違ったエメラルドグリーンの大きな目が、ジッと江湖を見つめていた。
「あら!かわいいわね!!俺の名前は江湖よ。よろしく」
「なぁ、エコの使い魔も見してや」
「あ」
そういえば、自分の使い魔と鬼ごっこモドキをしている最中だった。
それを思い出した江湖は、思わず腕時計に目をやる。
タイムリミットまで、あと2時間。
まだまだ余裕がある。
「なん?それ」
「腕時計よ」
この世界に腕時計はないのか。
江湖はネムレスに腕時計を簡単に説明する。
「はー、時代は進化しとるんやな」
聞くと、こちらでは懐中時計が主流らしい。
江湖の中では中世ヨーロッパのイメージがある。
ネムレスは持っていないのか、と聞くと、俺は時間に縛られたないねん。と、意味不明な言葉が返ってきた。
もう何も言うまい。
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