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江湖が深く考えることを放り投げていると、ネムレスは不思議そうに首を傾げる。
耳についているピアスがチャリ、と音を立て、江湖は気になっていたことを今になって聞いてみることにした。
「そういえば、ネムレスはどうしてそんな格好を?」
「ん?どれか変?」
「……あなた、半裸じゃない。服はどうしたのよ?」
「気づいたらこうなってたんよ」
どうツッコむべきだろうか。
これが俺の自然体やねん。とさも当然の如く言い張るネムレスに、江湖はなんて言葉をかけようか迷っていた。
「寒くないの?」
「全然!」
この国に四季があるのかは疑問だが、今はちょうど春や秋くらいの気温だ。
だからまぁ、寒くはないとは思うのだが、暑いわけでも決してない。
そして何より、公共の場に出るならばそれなりの格好をした方がいいとは思うのだが。
先程の騒動を思い出しながら、江湖は小さくため息を吐いた。
「とりあえず、ズボンのボタンくらい閉めなさいな」
「うぇー。窮屈やろーに」
「ガマンしなさい」
そのうち慣れるわよ。と言う江湖に、ネムレスは渋々ズボンのボタンを閉めた。
「ちょっとエコりーん、何してんの」
「あら」
気配は消していたものの、肉眼で見つけられたのか。
空からフワリと降りてきたのは不機嫌そうな顔をした花枝だった。
「どうしたの?花枝ちゃん」
「エコりん、あのクソ天使と鬼ごっこしてんの忘れてねー?」
「そういえばそうだったわね」
ネムレスとの話がおもしろくてすっかり忘れていた。
ふと腕時計を見れば、タイムリミットまであと30分だった。
随分と話し込んでしまっていたらしい。
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