第2走

3/19
前へ
/376ページ
次へ
やがて、石像の口から出てきた光の玉が、江湖の体に当たって吸い込まれる。 ピリッとした痛みが脳と足に走り、江湖は顔を歪める。 『これで、力の譲渡は完了した。汝、世界を渡る準備は済んでおるか?』 「準備も何も、世界を渡る気なんて俺にはないわよ」 『むぅ……、し、しかし……』 「わーかってるわよ。俺に拒否権なんてないんでしょ。サッサとやってちょうだい」 『……理解、感謝する』 「やめてよね、ますます意味がわからなくなるわ」 いきなり世界を渡るとか、力をやるだとか言われて意味がわからないんだから、とため息を吐く江湖。 あのウサギに関わってから、ロクな事が起きてないわ。 それを目の前の石像に言ったところで、なにかいい事が起きる訳でもないので、江湖は軽く頭を振る。 『では、転送を開始する』 石像の前にそんな文字が現れるのと、江湖の足元が円状に光りだすのは同時だった。 まったく、どいつもこいつもいきなりね。 とムスッとする江湖は、何かを思い出したように石像を見上げる。 「そうだ、言い忘れていたわ」 転送87%、という文字を浮かべている石像に、江湖はニッと笑う。 「力、ありがとね」 江湖が言い終わると、江湖の姿はその場から消えていた。 残された石像は、ふわふわと淡く光り輝いていた。
/376ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1300人が本棚に入れています
本棚に追加