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やがて、石像の口から出てきた光の玉が、江湖の体に当たって吸い込まれる。
ピリッとした痛みが脳と足に走り、江湖は顔を歪める。
『これで、力の譲渡は完了した。汝、世界を渡る準備は済んでおるか?』
「準備も何も、世界を渡る気なんて俺にはないわよ」
『むぅ……、し、しかし……』
「わーかってるわよ。俺に拒否権なんてないんでしょ。サッサとやってちょうだい」
『……理解、感謝する』
「やめてよね、ますます意味がわからなくなるわ」
いきなり世界を渡るとか、力をやるだとか言われて意味がわからないんだから、とため息を吐く江湖。
あのウサギに関わってから、ロクな事が起きてないわ。
それを目の前の石像に言ったところで、なにかいい事が起きる訳でもないので、江湖は軽く頭を振る。
『では、転送を開始する』
石像の前にそんな文字が現れるのと、江湖の足元が円状に光りだすのは同時だった。
まったく、どいつもこいつもいきなりね。
とムスッとする江湖は、何かを思い出したように石像を見上げる。
「そうだ、言い忘れていたわ」
転送87%、という文字を浮かべている石像に、江湖はニッと笑う。
「力、ありがとね」
江湖が言い終わると、江湖の姿はその場から消えていた。
残された石像は、ふわふわと淡く光り輝いていた。
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