1300人が本棚に入れています
本棚に追加
それでも、ネムレスについて行ったら生きては帰れない可能性だってある。と、思う。
それを思うとどうしても気持ちが萎縮してしまうのだが、見放す訳にもいかないじゃない。
あの時自分が行っていれば、なんて後悔を一生引き摺るよりマシな気がするし。
死ぬかもしれない、という事実があまり現実味がないからかもしれない。
まぁ死ぬ気はサラサラないのだが。
窮地に陥ったら真っ先に逃げよう。と、自分を無理矢理納得させる江湖に、花枝の不機嫌そうな声がかかる。
「エコりん、俺は反対だよー。エコりんの能力は戦闘向きじゃないもん」
「何ゆーとんの。あの速さに気配の無さはなかなか相手にすると厄介やで」
「黙れ。まる焦げにすんぞ」
「ひゃー。怖いわァ」
オファニエルを蹴り飛ばした花枝が空中から異議を唱える。
それに反応したのはネムレスだが、花枝にすごい勢いで睨まれ、肩を竦めた。
江湖に対する態度と180度違うその対応に、前の世界と変わらないわね、と江湖は苦笑する。
地球にいた頃も花枝は江湖以外には全然心を開かなかった。
睨むか、怒鳴るか、無視か。
唯一相手をしていたのは、あの風紀委員長様くらいだろうか。
あれもあれで、顔を合わせればすぐ喧嘩になっていた気がしないでもないが。
「だって花枝ちゃん。ここでネムレスを見捨てたら後味悪いじゃない」
「別にエコりんがいかなくても大丈夫だーって」
「俺が行かなきゃ、意味ないのよ」
そう、意味がない。
江湖が行かなかったら、そのせいで、ネムレスが帰ってこなかったら。
それこそ先刻の後悔を引き摺ってしまうのだ。
どっちにしろ後悔をするのなら、江湖はついていく事にする。
「わかるでしょ?」
空中から見下ろすその顔が、微かに歪んだ。
最初のコメントを投稿しよう!