第5走

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それでも、ネムレスについて行ったら生きては帰れない可能性だってある。と、思う。 それを思うとどうしても気持ちが萎縮してしまうのだが、見放す訳にもいかないじゃない。 あの時自分が行っていれば、なんて後悔を一生引き摺るよりマシな気がするし。 死ぬかもしれない、という事実があまり現実味がないからかもしれない。 まぁ死ぬ気はサラサラないのだが。 窮地に陥ったら真っ先に逃げよう。と、自分を無理矢理納得させる江湖に、花枝の不機嫌そうな声がかかる。 「エコりん、俺は反対だよー。エコりんの能力は戦闘向きじゃないもん」 「何ゆーとんの。あの速さに気配の無さはなかなか相手にすると厄介やで」 「黙れ。まる焦げにすんぞ」 「ひゃー。怖いわァ」 オファニエルを蹴り飛ばした花枝が空中から異議を唱える。 それに反応したのはネムレスだが、花枝にすごい勢いで睨まれ、肩を竦めた。 江湖に対する態度と180度違うその対応に、前の世界と変わらないわね、と江湖は苦笑する。 地球にいた頃も花枝は江湖以外には全然心を開かなかった。 睨むか、怒鳴るか、無視か。 唯一相手をしていたのは、あの風紀委員長様くらいだろうか。 あれもあれで、顔を合わせればすぐ喧嘩になっていた気がしないでもないが。 「だって花枝ちゃん。ここでネムレスを見捨てたら後味悪いじゃない」 「別にエコりんがいかなくても大丈夫だーって」 「俺が行かなきゃ、意味ないのよ」 そう、意味がない。 江湖が行かなかったら、そのせいで、ネムレスが帰ってこなかったら。 それこそ先刻の後悔を引き摺ってしまうのだ。 どっちにしろ後悔をするのなら、江湖はついていく事にする。 「わかるでしょ?」 空中から見下ろすその顔が、微かに歪んだ。
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