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石像に見送られて、たぶん異世界。
何も話を聞いていなかった訳じゃない。
自分がどういう状況にあるのかの把握はしている、つもりだ。
理解と納得はまったくの別物だけど、と、目の前に広がる星空を、江湖は寝転がった状態でしばらく見ていた。
何も、自分から寝転がっていた訳じゃない。
気がついたら、ここに倒れていたのだ。
「……もう、嫌ぁね」
江湖はため息を吐きながら立ち上がり、背中についた土を叩く。
さて、ここはどこだろう。
見渡す限りでは、ここは草原のようだった。
「……だーれも、いないわねぇ」
せっかくなので、石像にもらった力とやらを試してみる事にする。
もらったものは、試したくなるのが人間ってものよね。
と、江湖は軽く地面を蹴って走ってみる。
「自分が怖いわ……」
新幹線よりも速いだろう自分の足に、江湖は思わず頭を抱えた。
それに、身体能力だけじゃなく、反射神経も強化されているらしい。
ものすごい速さで走っても、周りの景色はハッキリ見える。
あの石像、余計な事を……とは思うが、反射神経が強化されていなくては、自分がどこを走っているかわからなくなっていそうだったので、感謝すべきか、と江湖はため息を吐いた。
「ん?」
2キロ程の距離を軽く走った江湖は、何かの気配を感じて顔をあげる。
危機察知能力が働いていない、という事は、危険は少ないという事なのだろうが。
行ってみるべきか、無視するべきか。
まぁ、暇だし、様子を見に行ってみるか、と江湖は歩いてその場所まで向かう。
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