第12走

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気がついたら、ドアを開けて叫んでいた。 自分が無力だって、知ってる。 何も出来ないって、わかってる。 でも、それでも、 「俺がいるせいで、龍人の自由がなくなるのは、ダメだ!!!」 嫌だ。嫌だ。 子供のワガママそのものだった。 どうして、いつも俺の存在は誰かの枷にしかならないのだろう。 そんな自分が世界で一番大嫌いだった。 「江湖……」 「君が、朝羽 江湖くんだね?」 「うるせぇオッサン!龍人を連れていくな!!」 「オッサ……」 こちらを驚いたように見る千切。 馴れ馴れしく話しかけてくる黒スーツの男にはフツフツと怒りが沸きあがってくる。 そしてそんな怒りなんて可愛く見えるほど、自分に対して怒りが沸いてきている。 「龍人を連れていくな!龍人、俺のせいで行くなら、俺は死ぬからな!!」 「な、何言って」 「うるさい!もう決めたんだ!!」 俺の存在が、誰かの邪魔になるなら。 なくしてしまった方が、よほどいい。 「ふざけた事言ってんじゃねぇよ!!!」 切り裂くような大声に、体が跳ねる。 見たこともないような顔でこちらを見る千切と目が合い、思わず怯んだ。 「お前を失いたくないからこその選択だろうが!それをお前自身が台無しにしてどうすんだバーカ!!!」 心底バカにしたようにこちらを見下す千切に、江湖は口元を引き攣らせる。 流石に言い返してやろうと口を開いた江湖より先に、千切の声が届いた。 「お前は生きろ」 その声は優しく、力強く。 拒否する事ができないほど、チカラを持った言葉だった。 結局、自分は護られる事しかできないのだ。 でも、しかし。 護ろうとしてくれるその心を、意思を。 自分が無視してしまっては、あまりにも。 「でも……」 俺の未来には、貴方がいてほしかった。
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