第12走

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「その後は、しばらく酷い様だったわ。見かねた俺が、テスカトリポカと一緒に江湖の記憶を封じた」 「は?シロと?」 「……シロって……まぁ、そうよ。テスカトリポカと江湖は小さい頃からお友達でね。まぁ、江湖は覚えていないみたいだけれど」 「いや、あいつエコりんのこと世界に閉じ込めようとしてたけど?」 「あぁ、遊びたかっただけなんじゃないかしら。あの子、口下手なところあるから」 はぁあ?何それー。と項垂れる花枝にコアは苦笑する。 まぁ、覚えていない江湖からしてみればあの反応も頷けるし、その反応を見た花枝が「江湖が襲われている」と見ても不思議ではない。 簡潔に言うと、「勘違い乙」である。 「じゃあ何、記憶を護ってたのってエコりんじゃなくお前らだったわけ。あー、俺の労力!」 詮索サボった俺も悪いけど、まじ無駄な時間過ごしたわー。と宙をクルクル回る花枝はこの際無視だ。 まぁ、勘違いといえど、この世界に飛ばしてくれたのには感謝している。 地球にいれば、江湖はここまで持ち直してくれなかっただろう。 いつまでも偽りの記憶のまま。 「千切は突然どこかに姿を消してしまった」と思い込んだまま生きていくことになっていただろう。 そして時々、記憶の枷が外れて、不意に思い出しては泣き叫ぶのだ。 これで、江湖は幸せなのだろうか。 常々考えていたその疑問の、答えは否だった。 きっと、このままではいつか限界がくる。 その時、「江湖」は壊れずにいられるのか。 わからなくて、ずっと怖かった。 「……事故、だったんだよな?」 コアの話を黙って聞き、考える様子を見せていたユオが口を開く。 「えぇ、そう。とても不運な事故。それでも江湖は、"自分さえいなかったら"とずっとそればかり。ずっと泣いてるわ」 無意識に、理解(わか )ってしまっているのかもしれない。 自分が特別な事など何もなく、産まれてすぐに息を引き取っていれば。と。
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