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「そんな事はないと信じたいわね」
「んぁ?なんて?」
「なんでもないわ」
小さく呟いた言葉に、少しマヌケな反応を返したユオ。
それに小さく笑えば、カシカシと頭をかいて小さくため息を吐く。
「俺には、アンタも泣いてるよーに見えるんだけど」
「え?」
「アンタの……コアの、想いも言ってみろよ」
ぶっきらぼうでも、優しい言葉。
なるほど、江湖が懐いたのもよくわかる。
稀に見る、綺麗な魂の持ち主だ。
ふふ、と思わず小さく笑ってしまったコアに、不思議そうに首を傾げるユオ。
「じゃあ、お言葉に甘えて少しだけ」と前置きをして、コアはそっと胸に手を当てる。
「俺が、産まれてすぐ死ぬはずだったこの子を生かしたっていう話、覚えてる?」
「あぁ」
「運命、なんてものは"こう"でなければいけないとか。そういうものではなくてね。この子を生かしたそれも、この子の運命だったのよ。
「そう、俺は思っているのだけれど。
「江湖は、どうかわからないから、少しだけ怖い。
「"もしも、江湖が俺の干渉を受けずに、産まれてすぐに死んでしまっていたら"。
"もしかしたら、両親は夫婦円満だったかもしれない"
"もしかしたら、千切 龍人は死ななくてすんだかもしれない"
「そういう後悔が、江湖を苦しめているのだとしたら。江湖を苦しめている原因は、すべて俺にあるんじゃないか?
「俺が、人間の子を生かしたから、「バーカ」」
沈みそうになる瞬間、パシッと頭を叩かれる。
びっくりして思わず顔を上げれば、呆れたようにこちらを見るユオがいた。
「お前ら二人ともバカだな。下しか向けねーのか」
言われている意味がわからず、パチパチと瞬きを繰り返す。
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