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思わず、地面を見てしまったコアに、「そういうことじゃねーんだわ」とまた軽く叩かれた。
「お前らの考え方って重すぎ。自分で自分を潰してんじゃねーよ」
何、地球の奴ってみんなこうなの?ともう一度ため息を吐くユオ。
言葉を選んでいるのか、数秒迷ったように視線を彷徨わせる。
「そうなっちまったもんは、しょーがねーだろ」
簡潔な言葉だった。
いや、そういう事ではなく。いや、そういう事なのか……?
と、回りに回って何も言い返せない事に気づく。
確かに、もう起こったことはやり直せない。
もし、時間を戻せるチカラをもってして、やり直せるとしても、そこは今いる世界線とは別の世界線だ。
起こってしまった事は変わらない。
そこに、今の自分の居場所はない。
「でも、それでも……もしも、って」
「その"もしも"は、いつか来るのか?」
ユオの静かな蒼い瞳に、言葉が喉につっかえて降りていった。
「だいたい、その"もしも"が、なんでお前ら"自分がいなかったら"なんだよ。自己犠牲なんざ流行らねーんだよ」
一歩間違えたら自分の事しか考えてねー自己中野郎だぞ。と厳しい言葉までいただいてしまった。
それで、なんで。
「江湖と出会えて、毎日楽しいわ」と笑った千切の顔が、ふと浮かんで目が霞んだ。
「暗いとこばっか見てねーで、ちょっとは明るいとこも見た方がいいんじゃねーの」
「貴方がいてくれてよかった」と、江湖の笑顔が浮かんでは涙がこぼれ落ちた。
俺だって、俺こそ。
「こちらこそ」と言いたかった。
ずっとずっと、「ありがとう」と言いたかった。
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