第12走

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なるほど、これはかなりの口下手さんである。 江湖は思わず苦笑した。 「エコりん、こいつと昔会ったことあるんだって」 「え?」 まったく記憶にないが、確かに。 ほんの少しだけ、どこか懐かしい気配を感じるのだ。 ほんと?とシロを見れば、小さく頷いた。 変わらず無表情だったが、なんだか少し寂しげだった。 「えっと、ごめんなさいね。覚えていないのだけれど……」 うぅ、罪悪感。 心なしか、兎の耳がシュンと垂れた幻まで見えてきそうである。 その顔を見て、ふと記憶の一部が目を醒ます。 「もしかして、あの時の……?」 白い、雪の日に。 その雪と同じように綺麗な、真っ白な髪の男の人と出会った。 何をしたのかまでは思い出せないが、あれは確かに今、目の前にいるシロだった。 今と姿形がまったく変わらないから、逆に結びつかなかった。 それを伝えれば、ほわっ、と雰囲気が柔らかくなるシロ。 どうやら合っていたらしい。 「江湖が、俺を覚えててくれた。だけで、嬉しい」 そう言って少し微笑んだシロの破壊力ったらなかった。 これが色気というやつだろうか。 思わず顔に熱が集まる江湖に、シロは首を傾げるが、本当にやめてほしいと思った。 しばらく熱が引かなかった江湖に、「え?エコりん嘘だよね?え?」とか、後ろが騒がしい気がしたけど無視しておいた。 「とりあえず、自己紹介からまたはじめましょう。俺は朝羽 江湖。あなたのお名前は?」 「……シロ」 よろしく、とふわっと笑うシロに「本当にその名前でいいのか」と思ったが、本当にそれでいいらしく、苦笑するしかなかった。 そんな江湖の頬にキスをしたシロに、また後ろが騒がしくなったのは余談。
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