第13走

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「こいつ、空を見るの今日が初めてなんだって」 俺が何も喋っていないのに、そのアルベルトという男は俺の事情を後から来た男に話しだす。 後から来た男の名前はシリアというらしい。 アルベルトと同い年くらいだろうか。 「それで、何かを見る度に"綺麗"だの"楽しい"だのキラキラした感情ばっかで、ほんと気持ち悪いったら」 「あぁ、お前にはない感情だもんな」 「ほんとにお前って僕に失礼だよね」 眉間にずっとシワを寄せているアルベルトに、シリアは気にした様子もなく俺の前に膝立ちで座る。 まだ10代くらいのその男はとてもガタイが良く、2人が並ぶとアルベルトの華奢さが際立った。 「ぶっ飛ばすよ」 「は?」 「お前じゃないよ」 突然の暴言に怪訝そうに振り返ったシリアに、アルベルトはぶっきらぼうに言ってそっぽを向く。 どうやら自分の身体が細い事を気にしているらしい。 アルベルトは口が悪かった。 今では柔和な笑みを浮かべながら丁寧な言葉で話すが、この頃のアルベルトはいつも仏頂面で、とても短気だった。 「キミ、こんなところで何してるんだ?」 シリアが俺に優しく話しかけてきたが、言葉がわからないので何も返すことが出来なかった。 何かを聞かれていることはわかるが、それが何かわからない。 だんだん怖くなってきて、俺はヨロヨロと立ち上がると、シリアやアルベルトから逃げるように歩きだした。 「ちょ、まってくれ」 突然、何も言わず離れていく俺の腕を、シリアの手が掴んだ。 初めて感じる他人の体温に、ビクッと身体が跳ねた。 ますます怖くなって、しかし、身体は不思議と動かなかった。 「無駄だよ。そいつ、言葉がわからないんだってさ」 「は?」 「あと、お前が怖いって」 小刻みに震えだした俺に、シリアは慌てたように腕を離して狼狽える。
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